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2008.12.22 *Mon

創作意欲が湧いただけ。

SS【雨】



――――雨が降る。

それは日常的なことで、ごく当たり前で。
雨の降らない1年なんか、日本にあるわけもなく。

あの人に出会ったのも、この場所で・・・。
・・・離れる事も、ある訳がなく。

雨は私に突き刺さる。

2LDKと少し広いマンションの1室。
当たり前だ、…ここには2人で住んでいたのだから。
香苗は、少し前に寮生活になって此処を出て行った。

あの子は本当に強くなったね。
2つ上の私よりも、…大分強くなった。

午前5時。
まだ暗い、朝日もまだ差し掛からない時間。
今日は酷く冷える…そう思ってカーテンを開けたら・・・

「…そう、…雨だったの」

ザァと大粒の雨が、窓を何度も叩く。
思い出せ、と。
あの雨の日のことを、…私の世界が一変した日を。





「…兄さん?」

水浸しの砂利道、泥に汚れるスカートなど気にしている暇なんかない。
…雨が全て綺麗に洗い流してくれるから。

「…ぅ……」

私の目の前は、あなたの綺麗な黒髪。
私の憧れた、真っ黒な髪…真っ黒な瞳。
…それに、あわせるように流れる真っ赤な血。

「…兄さ、…いやだ」

支える力も、底をつき、一回り大きな体は地面に叩きつけられる。
パシャリ、…泥水が跳ねた。真っ赤な、血と混ざり合った泥、と水。
…すぐに、雨にかき消されたように消えていく。

「…愁羅」
「…いやだ、…嫌だよ。一人にしないで…」

冷たい手は私の頬を掠める。
兄さんの綺麗な、手。

「……、…もう1人…も、君は強いからっ…」

―――あぁ、これは別れの言葉なんだと。
冷静に脳は反応した、一気に沸騰した脳は冷めてしまった。

「……直ぐに、仲間も…くる」
「…もう、喋らなくていいわ」

前方の黒い物体は、もう動くことを知らず…ただの腐敗した生き物だった。
あれは何なのか、わからない。
兄さんが何者かも、わからない。
しかし、…私はもう忘れない。

「……はは、…けほっ…眠いや、…」
「…そうね、こんなとこじゃ何だけど…膝枕ぐらいしてあげるわ」

せめて、最後なのだから。…とは言わないけれど。
ごめんなさい、私は貴方の人生までも奪ってしまったんだね。
時間じゃ足りなかった、…全ての時間までもを…奪ってしまった。

「……おやすみなさい、兄さん」
「……ん、…おやすみ、愁羅」

雨は冷たい兄さんの体を真っ白にしていく。
全ての血までも、雨に奪われてしまった。
私の感じた体温までも・・・雨に奪われてしまった。

「さようなら…。…愛してるわ、兄さん」

どうか、この声が…届いていることを信じて。




あれ以来、雨は嫌いだ。
また、思い出してしまった。
曖昧な初恋の記憶、……失恋したのやら、叶ったのやら。

「…まぁ、…どっちでもいいけどね」

もう、本人はいないことだし。
納得は出来ないけれど、いつまでも引きずってても仕方ないし。

「…といって、もう5年ですか」

昔のことを思い出しながら作ったココアは、…かなり甘かった。
これで、眠れるのなら…それでいいのだけれど。



「…今日も、学校休もうかなぁ…」

雨の日の出席率、ほぼ0。
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